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犬の外耳道内の細菌叢と外耳炎の有無における関連性を解析した遺伝学的研究

投稿者:武井 昭紘

犬の外耳炎は、一次診療施設で最も頻繁に遭遇する炎症性疾患の一つであり、一部の症例では、炎症の鎮静化から暫くして、再発を繰り返す病態を呈することが珍しくない皮膚トラブルである。しかし、再発をしやすい症例と、外耳炎を起こしにくい個体との間にある「何らかの差異」について、明確に示した研究は少なく、両者を分つ要因の解明は、今後の獣医療が克服すべき課題となっている。

そこで、カナダのゲルフ大学は、①外耳炎症例と②臨床上健康な犬における外耳道の細菌叢を比較する遺伝学的研究を行った。すると、16S rRNAの配列解析によって、両群合せて27種の細菌が同定され、②よりも①では、11種の細菌種(Staphylococcus属、Pseudomonas属、Parvimonas属)が繁殖していることが明らかになったとのことである。

上記のことから、①と②の外耳道内の細菌叢は全く異なることが考えられ、①の細菌叢を②のそれに近づけることが叶えば、外耳炎の症状を抑えられる可能性が示唆されたものと思われる。よって、更に研究が進み、腸内細菌叢を整えるプレ・プロバイオティクスをモデルとした、外耳炎の再発に悩む症例や外耳炎に対する既存の内科療法が奏効しないケースに適応できる「外耳道内細菌叢コントロール療法」が開発されることを期待している。

今回紹介した研究をキッカケに、プレまたはプロバイオティクスが出来る「外耳道洗浄液」が製品化されることを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30828896


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