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ワクチンの効果を上昇させるために応用された中獣医学に関する研究

投稿者:武井 昭紘

中獣医学とは、ヒトの中医学の知識をベースに小動物臨床へと応用した東洋医学であり、西洋医学の副作用・合併症を避けるために、または、西洋医学の限界を補うために、活用されている医療技術である。故に、筆者は、この中獣医学に対して非常に興味を持っており、西洋医学とは別のアプローチで動物の命を守り・救う獣医療サービスの一つとして認識すべきと思い、以前、猫の血小板無力症へ東洋医学を適応した例について記事を作成させて頂いたこともある。

そこで、今回も、また一つ、中獣医学の可能性を紹介したいと思う。

2019年2月、フロリダ大学らは、ジステンパーウイルスワクチンの効果を上げることを目的として、ワクチン接種部位に鍼治療の観点を取り入れた研究を発表した。具体的には、本研究では、督脈(Governing Vessel、GV)と呼ばれる犬の背側(臀部から鼻先)に並ぶ経穴、いわゆる「ツボ」の列の中から、GV14(大椎とも称されるツボ、C7とT1の棘突起間)を選び、そこを狙ってワクチン接種するという手法が採用されており、①GV14接種群と②コントロール群における中和抗体の力価が比較されている。そして、その結果、同大学らによると、②よりも有意に高い力価が①で認められたとのことである。

上記のことから、経穴にワクチンを接種する手法、つまり、経穴ワクチン接種法が、ワクチンの効果を上げる医療技術として有用であるかも知れないと考えられる。よって、今後、中医学に精通していない獣医師にも正確な接種部位が把握できるようにガイドラインが整えられて、大規模臨床によって、今回紹介した研究の再現性が検証されることに期待している。

多価ワクチンを用いた経穴ワクチン接種法でも抗体の力価が上昇するか否かについても検証されていくことを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30799157


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