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高血圧症を罹患した猫の網膜の血管を客観的に解析するソフトウェアに関する研究

投稿者:武井 昭紘

何らかの原因によって高血圧症を罹患する猫では、高い血圧が網膜に分布する血管へも影響を及ぼし、緑内障や眼底出血などの眼症状を発現してしまうため、網膜血管のモニタリングが重要であるとされている。しかし、眼底(網膜)の検査は、経験を要する手技であるとともに、画像所見を視覚的に(いわば主観的に)評価する特徴を有するがため、ペットオーナーおよび新人獣医師には非常に理解しづらい検査であると言わざるを得ない。

そこで、2019年2月に発表された以下の研究を紹介したい。

スコットランドおよびイタリアの大学は、①臨床上健康な猫と②高血圧症の猫の2群に分けて、眼底検査による網膜血管の撮影を行い、ヒト用に開発されたイメージングソフトウェアVAMPIRE® (Vascular Assay and Measurement Platform for Images of the Retina)で、両群から得られた画像を解析した。すると、①に比較して、②では、有意に、網膜の動脈径が減少し、静脈径が増大すること(網膜血管の分岐角の変動を伴う)が明らかになったとのことである。

上記のことから、VAMPIRE®は、網膜の画像所見を数値化(客観化)することに優れたシステムであると考えられる。よって、将来的に、小動物臨床用のVAMPIRE®が開発される事とともに、犬猫の網膜血管に纏わる「参照値」が設定され、新人獣医師にも実践しやすく、ペットオーナーにも分かりやすい獣医療サービスが提供できるようになることを期待している。

今回紹介したVAMPIRE®が、進行性網膜萎縮症や網膜剥離の診療へも応用できるような研究が計画・立案されることも願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30793467


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