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抗生剤の乱用に関するオンラインアンケート調査から見えた期待感

投稿者:武井 昭紘

犬の表在性膿皮症の主要な病原菌であるStaphylococcus pseudintermediusは、動物病院で汎用されるセフェム系およびニューキノロン系抗生剤に耐性を獲得していることが珍しくない細菌で、二次診療施設では、分離株の50%以上が、これに該当するという発表もなされるほど深刻な事態となっている。また、世界各地で、多剤耐性S. pseudintermedius(MRSP)の出現が次々と報告されていることも考慮すると、耐性菌の蔓延に関する周知徹底と抗生剤の乱用を喰い止める対策の計画・立案を世界各地で進めていくことが、急務であると思われる。

そこで、今回は、ポルトガルにて実施された獣医師のオンラインアンケートについて紹介していきたい。

なお、同アンケートは、International Society for Companion Animal Infectious Diseases(伴侶動物の感染症に関する国際団体)の提唱しているガイドラインへの遵守意識と、頻繁に使用している抗生剤の種類を問う形式で、700を超える動物病院が対象となり、解析に値する完全な回答が100件、得られたとのことである。その結果、実に50%もの獣医師がガイドラインを知らない、または、守っていないということが判明し、β-ラクタム系抗生剤(90%以上)およびニューキノロン系抗生剤(60%以上)を皮膚疾患症例に多く処方していることが明らかとなった。

上記のことから、ポルトガルでは、世界的なMRSPの広がりにも関わらず、未だ、耐性を獲得している抗生剤を乱用しているという「望ましくない実態」が、本調査から窺えるのではないだろうか。しかし、一方で、筆者は、このアンケートに僅かな期待感を持っている。それは、抗生剤使用のガイドラインを知らなかったと回答した獣医師の存在であり、彼らは、アンケートを配布するだけで、ガイドラインの存在を周知することが可能なのだということを教えてくれているように思うのだ。よって、今後、本国の小動物臨床にて、ガイドラインや改訂された法令を認知させるための重要な手段として、「お知らせを兼ねたアンケート」の配布がなされることを願っている。

今回のアンケートでは、抗真菌薬の使用実態についても調査されておりますので、是非、リンク先をご参照下さい。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30729217


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