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炎症性腸疾患とリンパ腫を鑑別できる新たな細胞学的検査法の開発を試みた研究

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床における嘔吐・下痢の鑑別疾患の中には、①炎症性疾患と②腫瘍性疾患が混在しており、両者(その他の鑑別疾患について本稿では触れない)を早い段階で明確に区別し、治療方針を立てることが望ましいとされている。しかし、経験の浅い獣医師の診察、もしくは、オーナーの経済的理由により実施検査の種類に制限を受ける症例では、①②を区別する(気が付く)ことが難しく、既存の検査法以外の簡便な手法により、「②を疑うキッカケ」を設けることが、非常に重要であると思われる。

そこで、カナダのモントリオール大学は、①に該当する炎症性腸疾患(IBD)と②に該当するリンパ腫における赤血球の数的および形態学的差異を解析する研究を行った。すると、貧血の程度、形態学的異常所見(偏心赤血球など)によって、両者を感度・特異度ともに約70%の確率で判別できることが明らかとなったとのことである。

上記のことから、本研究を基に、検査精度を上げるように「赤血球の細胞学的検査」が改良されれば、新人獣医師にも取り組み易く、比較的に安価にオーナーへとサービス提供できる①と②の鑑別方法の開発が充分に期待できると思われる。

同研究によると、貧血を伴う3つ以上の赤血球の形態異常が検出されると、リンパ腫の可能性が疑わしくなるとのことです。

 

参考ページ:

https://avmajournals.avma.org/doi/abs/10.2460/javma.254.4.487


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