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世界初~異所性の膵臓組織が腫瘍化した犬のケースリポート~

投稿者:武井 昭紘

膵臓は、胃・十二指腸の一部に沿うようにして存在している消化器系および内分泌系の内臓で、生命維持には必要不可欠な血糖値のコントロールをも担当している重要な器官である。そのため、膵臓組織、特に、インスリンを産生する細胞の腫瘍化(インスリノーマ)は、血糖値が大幅に低下し、命を脅かすほどに、罹患犬の病状・体調を大きく悪化させる特徴を有しており、仮に、前述した膵臓組織が、本来とは全くことなる場所で腫瘍化してしまったら、低血糖の謎を突き止めることが困難を極め、動物を助けることは叶わないと思われる。

そのような恐ろしい事態の発生を懸念される世界初の症例がトルコ共和国から報告された。

なお、トルコの首都に位置するアンカラ大学は、神経症状を呈するシベリアン・ハスキー(1.5歳齢)の剖検をした際に、胆嚢壁(漿膜)に腫瘍化した膵臓組織が確認され、免疫組織学的にインスリン産生細胞が存在していたとのことで、同大学は、「世界初」の犬における膵性コリストーマ(pancreatic choristoma、注1)と結論付けた。

上記の事象を考慮すると、膵臓に病変が無くともインスリノーマが疑われる症状を発現する犬に遭遇した際には、膵性コリストーマの可能性を模索することが望ましいのかも知れない。

 

注1:コリストーマとは異所性に発生した組織が腫瘍化する現象のこと

膵性コリストーマを起こした胆嚢壁は、白色に変化するとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30691601


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