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脾臓の血管肉腫を抱える犬の生存期間を延長させる免疫学的療法に関する研究

投稿者:武井 昭紘

犬の血管肉腫は、血管内皮細胞を由来とする予後不良(5年生存10~35%)の悪性腫瘍で、好発犬種の死因の2%を占めるとされ、これは、実に年間12万匹もの個体が米国内で斃死している計算となってしまう。また、この血管肉腫は、脾臓に発生することが多く、救急疾患(脾臓破裂に伴う腹腔内出血)による命の危機を回避するために、脾臓摘出術が適応されることもあるのだが、それであっても、生存期間(中央値)は約50日と非常に短いことが特徴である。故に、脾臓の破裂を防ぐように腫瘍組織を縮小させる、または、生存期間を延す治療法の開発が急務の課題であり、常に望まれている現状にある。

そこで、テキサス州に位置する大学・研究機関などが協力して、血管肉腫を患った犬を対象に、人医療にて免疫機能を増強できるとされている樹状細胞ワクチン療法(ドキソルビシンおよびインターフェロンα療法を併用)の有用性を検証する研究を行った。すると、当該療法を適応した罹患犬の生存期間は、前述した数値の2倍以上、109日まで延長することが明らかになったとのことである。

上記のことから、樹状細胞ワクチン療法は、犬の血管肉腫の治療計画に組み込むことができる医療技術となり得ると考えられる。よって、今後、樹状細胞が担癌動物に齎す「恩恵」を獣医学的に詳細に分析して、樹状細胞ワクチン療法の効果の全容が解明されていくことに期待している。

樹状細胞ワクチンが、広く一般の動物病院で利用され、多くの動物の命を救うことを願っております。

 

参考ページ:

https://www.nature.com/articles/s41417-019-0080-3


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