近年、血液サンプルの代替として、唾液による生化学検査が小動物臨床において注目されており、犬の筋損傷(クレアチニンキナーゼ、CPK)やストレスレベル(バソプレシン、オキシトシン)の判定などが報告されている。筆者は、これらの文献を見るにつけ、唾液生化学検査の有用性・将来性を感じており、特に、物資が不足する被災地での獣医療サービスの提供に大きな役割を担うのではないかと期待している。そこで、更なる唾液サンプルに関する研究を紹介したい。
2018年7月、スペインの大学らによって、犬の唾液を用いた腎パネルの測定(BUN、CRE)を検証した研究が発表された。
なお、スペインの大学らによると、①臨床上健康な犬と②慢性腎臓病(CKD)の犬におけるクレアチニン(CRE)および尿素窒素(BUN)の変動を観察し、①よりも②の唾液サンプルの方が有意に高いCRE・BUNの値を示し、同一個体の血液サンプルの結果と正の相関を認めることが判明したとのことである。
上記のことから、唾液サンプルは、CKDの診断やモニタリングの一翼を担えるものと考えられる。よって、今後、タンパク質濃度、肝パネル、電解質にも唾液生化学検査が応用できるかについて、順次、分析されていき、唾液スクリーニング検査が確立することを願っている。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30029662