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人医療で確立されている骨吸収マーカーを小動物臨床へと応用した挑戦的研究

投稿者:武井 昭紘

人医療では、ヒトの骨粗鬆症など、骨吸収を起こす病態を検出するマーカーとしてβクロスラプス(骨コラーゲンの代謝によって産生されるアミノ酸配列)が商業化されており、この数値またはクレアチニンとの比が高い程、骨吸収が進行している(骨粗鬆症を罹患するリスクが高い)と判定されいる。このことを基に、マーカーの特性を考慮して、視点を変えた発想をすると、小動物臨床における高Ca血症の原因を特定すること、言い換えると、骨吸収に起因する血中カルシウム濃度の上昇が起きているか否かを判定することに応用できる可能性があると考えられる。

そこで、ミネソタ大学は、シュウ酸カルシウム尿石症を伴う高Ca血症の犬を対象に、血清中βクロスラプス濃度(β-crosslaps)の測定をする研究を行った。すると、コントロール群(尿石症の伴わない高Ca血症の犬)と供試犬との間で、尿石症を説明するに足るβ-crosslapsの変動は認められなかったとのことである。

上記のことから、高Ca血症に罹患した犬における尿石症の併発を起こす原因は、「骨吸収ではない」ということが明らかとなった。つまり、β-crosslapsは、高Ca血症の原因を特定する以外にも、除外診断のツールとしての有用性が秘められているものと思われる。よって、今後、更なる研究が進められ、参照値の設定や検査を適応する疾患リストが体系化されていくことを期待している。

本研究で用いられたβ-クロスラプスの検出法(ELISA)を基に院内検査キットが流通すれば、高Ca血症の鑑別・除外診断がスムーズになるかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/30641472/


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