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猫の先端巨大症における病態の一部を明らかにした遺伝子学的研究

投稿者:武井 昭紘

猫の先端巨大症は、成長ホルモンの分泌を伴う下垂体腫瘍が原因で発症する内分泌疾患で、ヒトのそれと比べて10倍以上の罹患率を有するとされている。また、当該疾患は、頭部・下顎の巨大化、変形性関節症、神経症状を発現するとともに、症例の多くが、インスリン抵抗性の糖尿病を併発し、予後は不良となってしまう。故に、先端巨大症の全容を詳細に把握し、早期診断・早期治療を目指すためにも、多角的なアプローチから病態解析を実施する必要がある。

そこで、イギリスの大学らは、先端巨大症を患った猫において、ソマトスタチン受容体(somatostatin receptors、SSTRs)およびD2ドパミン受容体(D2 dopamine receptor、DRD2)の遺伝子発現をmRNAレベルで分析する研究を行った。すると、臨床上健康な個体よりも先端巨大症の猫でSSTR1、SSTR2、SSTR5の発現が高いこと、そして、DRD2の発現と下垂体の体積との間に負の相関が認められることが明らかとなった。

上記のことから、下垂体腫瘍または先端巨大症を疑うキッカケとして、DRD2のmRNAの発現を確認する検査が有用であると思われる。加えて、本研究(遺伝子発現)をもとに、下垂体腫瘍を伴わない糖尿病と、先端巨大症の鑑別ができるガイドラインの作成も進んでいくことに期待している。

一日でも早く、先端巨大症・下垂体腫瘍を精査するための遺伝学的検査が商業化されることを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/30620005/


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