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放射線療法に対してペットオーナーが感じている印象を調査した研究

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床における放射線療法は、主に、一部の腫瘍性疾患に適応されるのだが、「放射線」という言葉の響きから、ペットオーナーに、「副作用の強さ」や「正常な細胞への大きなダメージ」などの漠然としたネガティブな印象を無意識的に持たせてしまうことがある。だが、実際、当該療法は、麻酔のリスクや皮膚疾患(皮膚炎、脱毛)は伴うものの、外科手術を回避したり、通院が可能であったり、腫瘍組織の縮小(治療開始後数日~6ヶ月程度)が期待できたりと利点が多いため、ペットの命を救う目的で確立された医療技術なのだとオーナーに認識してもらう啓蒙活動によって、ネガティブな印象を少しでもポジティブに変換することが、獣医療レベルおよび腫瘍性疾患の治療成績の向上に必要ではないかと思われる。

そこで、ロンドンの北東に位置するサフォーク州に慈善団体Animal Health Trustは、愛犬が放射線療法を受けたオーナーに、治療開始から6週間以降(もしくは治療終了)の時点における満足度を10段階にて評価してもらう調査を行った。すると、70組を越える回答を得られ、90%以上のオーナーが治療に満足しているという結果をなったとのことである。

上記のことから、本調査の満足度は、現在、放射線療法を悩み検討しているオーナーへのインフォームド・コンセントに使えるのではないだろうか。また、約10%を占める「満足していない」オーナーの心情を解析すれば、放射線療法の課題点を浮き彫りにすることができ、更なる獣医学の発展を目指せるものと考えられるため、今後の追加調査の実施に期待したい。

8割強のオーナーは、放射線療法を受けた個体とは別の犬が居たら、治療の必要性に応じて放射線療法を受けさせたいと考えているとのアンケート結果も出ているとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30618206


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