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犬の鼻に発生した扁平上皮癌に対する外科治療に応用された形成外科学的発想

投稿者:武井 昭紘

犬の鼻平面(鼻先)~外鼻孔にかけて発生する扁平上皮癌に適応する腫瘍摘出・切除術(プランクトミー術)には、罹患個体の顔貌が大きく変化してしまうデメリットが伴っており、おそらく、獣医師のみならず、オーナーも気になるであろう手術の痕跡が残ってしまう現状がある。これを、ヒトに置き換えて見つめ直せば、小動物臨床においても、形成外科学的発想による治療法の開発を模索するべきと考えられ、可能な限り、ペットおよびオーナー、両者のQOLを向上させるアイデアの考案が必要であると思われる。

そこで、ジョージア大学は、手術後の外観の変化を目立たなくするための両側性口唇皮膚粘膜回転フラップ術(bilateral labial mucocutaneous rotation flaps)を、前述した対象疾患を抱える犬に適応して、オーナーの満足度を調査する研究を行った。すると、回答が得られた11名中10名が、愛犬の「術後の外観」に満足しているという結果を得られたとのことである。

上記のことから、愛するペットとオーナーの術後の生活に配慮した獣医形成外科学の確立は重要であると言えるのではないだろうか。よって、今後、ヨーロッパ、オーストラリア、アジア圏でも、両側性口唇皮膚粘膜回転フラップ術によってオーナーの満足度が上昇するかについて検証がなされることを期待している。

将来的に、ペットオーナーが気にならないようように手術痕を整えることまでもが、獣医外科学の成書に記載されることを期待しております。

 

参考ページ:

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/vsu.13120


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