現在、蓄積されている小動物臨床の腫瘍学を構成しているデータは、特定の症例が集まりやすい高次診療施設またはペット保険会社から発表されたものが多い。しかし、高次診療には行かず、任意保険に加入していない個体が含まれている一般家庭または一次診療施設を母集団と考えた時に、その裾野は、文献とは全く異なる様相を示し、検出される統計学的結果にも差異が生じていると予想することができるのではないだろうか。
そこで、シドニー大学は、国内の一次診療施設2院が抱えるカルテを基に、6000匹を超える犬の記録を集積して、リンパ腫の発生に関与するリスクファクターの解明を試みた。すると、リンパ腫が発生しやすい、つまり、オッズ比が高い30品種のうち、15の種において、過去の報告よりもリスクが高くなっていることが明らかになったとのことである。
上記のことから、論文検索サイトにエビデンスを求めることも重要だとは思う一方で、動物病院それぞれが所有するカルテをデータ化することも、地域の有病率の把握と自院の診療レベルの向上にとって大変有意義なことであると考えられる。
参考ページ:
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jvim.15306