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犬における悪性腫瘍の存在を証明するバイオマーカーの開発

投稿者:武井 昭紘

経験の浅い獣医師にとって、動物の外観に変化が無い腫瘍性疾患に診断を下すことは非常に難しいようで、筆者から見ると、腫瘍の存在を数値に置き換えて客観的に判定することが強く望まれているようにも思える。しかし、小動物臨床、特に一次診療において、全腫瘍に対応したバイオマーカーは、現在、商業化されておらず、今後の獣医療の発展に期待するところになってしまう。

そこで、以下の論文を「希望の光」として紹介したいと思う。

2018年11月、ペンシルバニア大学と韓国の大学らは、哺乳類の細胞内に局在するcAMP依存性プロテインキナーゼ(CPKA)が腫瘍の発生に伴って細胞外へと流出することに着目して、①臨床上健康な犬、②非腫瘍性疾患、③良性腫瘍、④悪性腫瘍の4つのグループによる細胞外CPKAに対する抗体(ECPKA-Ab)の測定を行ったことを発表した。なお、大学らによると、①②③よりも④の方がECPKA-Abを有意に多く保有しているとのことで、ECPKA-Abは悪性腫瘍の存在を証明するマーカーとなり得ると結論づけている。また、ECPKA-AbおよびC反応性タンパク質(CRP)を用いて算出される新生物指数(neoplastic index、NI)でも、悪性腫瘍に罹患した個体を識別できる有用性が確認されている。

上記のことから、院内検査にてECPKA-AbまたはNIが測定できるキットや医療機器が開発されれば、大学を卒業したばかりの新人獣医師でも、悪性腫瘍を疑う症例を確定診断へと近づけることが出来るものと思われる。

将来的に、良性腫瘍を疑えるマーカーも開発されれば、更に精度の高い獣医療の提供ができるようになるかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30411459


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