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ELISA法で検出できる犬の敗血症マーカーの有用性と院内検査キット開発への期待

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床における敗血症は、明確に定義が決められていないため、ペットオーナーおよび新人獣医師にとって非常に理解しにくい病態であるとともに、進行すれば死に至る危険な疾患にもなり得ることから、診断基準またはガイドラインの作成に向けた研究は大変重要であると考えられる。故に、敗血症マーカーの開発(プロカルシトニン)や、関節炎と敗血症の関連を探る解析などを当サイトにて取り上げさせて頂いたのだが、依然として、敗血症の全容は未だ把握されているとは言い難く、今後も、研究の進展と新たなアプローチの考案に期待するところとなっている。

そこで、以下の論文を本稿にて紹介したいと思う。

2018年8月、アメリカおよびスイスの大学らは、犬の大動脈由来内皮細胞(初代培養細胞)から放出されることが確認されているアンギオポエチン2(Angiopoeitin-2)に着目して、犬の敗血症例の血漿からAngiopoeitin-2を検出する研究(ELISA法)を行ったと発表した。なお、大学らによると、臨床上健康な犬に比べて、敗血症を患った個体では、血漿中Angiopoeitin-2濃度が3倍以上に上昇することが判明したとのことである。

上記のことから、血液サンプルとELISA法を用いたAngiopoeitin-2の検出は、院内検査用キットの開発が現実のものとなれば、一次診療でも直ちに実践できる有用な「犬の敗血症の診断基準」の一つに組み込めるものと考えられる。また、冒頭で触れた敗血症マーカーとAngiopoeitin-2の双方を用いた敗血症のステージ分類の設定についても進められていくことを願っている。

アンギオポエチン2のように、一次診療で実施できるかも知れない敗血症診断法が数多く報告されることを期待しております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30058854


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