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猫の歯肉炎を治療するケミカルメディエーター遊離抑制薬に関する研究

投稿者:武井 昭紘

◆フマル酸ケトチフェン(ケトチフェン)について◆

ケトチフェンは、文栄堂から出版されている「小動物の治療薬」で取り上げられている通り、ヒスタミン拮抗薬(ケミカルメディエーター遊離抑制薬)に分類され、ステロイドなどの既存の医薬品が奏効しない症例において、抗炎症効果を発揮してくれる薬剤の候補として期待されている。しかし、獣医療における有用性は明らかになっておらず、薬用量、効能、副作用を一つずつ解明していく必要がある薬剤という位置付けから脱すことができていない—–。

 

そこで、北京に拠点を置く中国農業科学院は、猫の歯肉炎に対するケトチフェンの効果に着目して、検証を行った。なお、同検証では、①投与群(5mg/kg q12h)と②薬剤を投与しない対照群の2つに猫をグルーピングして、歯肉炎の評価、サイトカインの測定、酸化ストレス、細胞内シグナリング、病理組織学検査など様々な観点から両群が比較されており、ケトチフェンが歯肉炎の進行を抑制する作用を有することが判明したとのことである。

上記のことから、ケトチフェンは、猫の歯肉炎を治療する薬剤として応用できる可能性を秘めていると思われる。よって、今後、難治性の歯肉口内炎を抱える猫を対象に大規模臨床試験が検討され、抜歯(麻酔処置、外科手術)を回避できる個体の有無が明確になることを願っている。

今後も、獣医薬理学の成書に詳細が記載されていない薬剤について、犬猫に対する有効性が検証されていくことを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30316074


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