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犬の嗅覚が教えてくれる肺癌~生物学的呼気検査法の未来~

投稿者:武井 昭紘

一昨年、ミズーリ大学の猫における呼気凝縮液(Exhaled breath condensate、EBC)検査について紹介した通り、生体から体外へ排出される呼気には、特定の疾患を診断するヒントが隠されており、それを察知するシステムの構築は、今後の医療・獣医療の発展にとって、大きな起爆剤となる可能性を充分に感じさせるものであった。また、昨年の11月1日の記事にて、マラリア感染者の匂いを認識する犬について述べたように、ヒトの身近に居てくれるペットに秘められた能力(嗅覚)もまた、医療レベルを引き上げる原動力となり得ると考えられる。

ここで、自由な発想のもと、前述の2点を合わせて未来の医学を見つめると、嗅覚の鋭い犬に「呼気の異常」、つまり、「呼気から鑑別できる疾患」を教えてもらうことが叶えば、侵襲性の極めて小さくストレスフリーな検査・診断法を生み出すことが出来るのではないかという結論に達する。

そこで、ドイツのベルリン自由大学は、犬に協力してもらい、肺癌患者の呼気からバイオマーカーを検出する研究を行った。なお、同研究では、肺癌と関連した呼気成分の嗅ぎ分けにチャレンジしており、2匹の供試犬の感度は88~100%、特異度は40~80%であった。

上記のことから、犬が嗅ぎ分けトレーニングを積むことで検査精度は向上していくと仮定すると、いつか、肺癌健診の会場に呼気検査犬が常駐していることが当たり前になっている未来を期待できるのではないだろうか。

シェルターで生活する犬から肺癌を探知できる個体を見つけるシステムが確立されれば、殺処分件数をゼロに向かわせるキッカケになるかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5861141/


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