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World Antibiotic Awareness Weekに合わせて発信された小動物臨床における7つの注意点

投稿者:武井 昭紘

黄色ブドウ球菌(MRSA)の新しい耐性遺伝子、小動物臨床におけるカルバペネム耐性腸内細菌科(CRE)の出現CDCのカンピロバクター感染症に対する勧告などを耳にすると、現在の医療・獣医療のどちらにおいても、細菌と動物(ヒトを含む)を取り巻く環境の根本は、ペニシリンが発見された時代と同様で、新薬の開発による抗生剤療法に強い期待を寄せる状況にあることを痛感する。しかし、一方で、前述の事態に終止符を打つ「抗菌」療法の確立の必要性も実感し、その一歩として、抗生剤に過剰な依存をしない医療の世界的な実現が非常に重要なキーポイントとなるとも考える次第である。

このような概念は、おそらく、医療従事者個人よりも、全国的または国際的な組織が抱く傾向が強く、現場で命を救い続ける獣医師は、定期的に当該組織が発信する「事の深刻さ」を勉強していく必要があると思われる。そこで、本稿にて、世界保健機構(WHO)の啓蒙活動World Antibiotic Awareness Week(11月12〜18日)に合わせたイギリス獣医師会(BVA)の情報発信を以下に紹介したい。

◆BVAが提唱する7つの耐性菌対策◆
1.抗生剤療法を回避するアイデアについてペットオーナーと相談する
2.不適切な抗生剤の使用をしない
3.病原体に効く「正しい」抗生剤を選ぶ
4.薬剤感受性について都度モニタリングする
5.最小用量の抗生剤を使う
6.治療プロトコルを正当な理由とともに記録する
7.耐性菌の出現を専門機関に報告する

日本の人医療現場では、未だ、6割の医師が6に示された「正当な理由」が無い抗生剤の使用を続けているという。

よって、BVAからの7つのメッセージと「本国の現状」を併せて考慮すると、今よりも更に手強い耐性菌との闘いに挑まなくて済むようにするには、未来の獣医療を担う学生および新卒者が、BVAに即した自身の診療方針を早い段階で固めることが大切で、そのサポートを上級獣医師が全力でサポートすることが望ましいのではないだろうか。

小動物臨床における来年以降のWorld Antibiotic Awareness Weekにて、抗生剤に依存しない抗菌療法に関するコンテストが開催されることを願っております。

 

参考ページ:

1.WHO

http://www.who.int/who-campaigns/world-antibiotic-awareness-week

 

2.BVA

https://www.bva.co.uk/uploadedFiles/Content/News,_campaigns_and_policies/Policies/Medicines/20170928%20BVA%20Antimicrob%20poster%202017%20v1%20WEB.pdf


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