世界的ないしは国全土を広くカバーする輸血療法を実現するためには、血液製剤を長期に保存し、必要とされる医療機関へと届ける血液バンクの設立が重要であり、その大きな鍵の一つとなるのは、「赤血球の溶血を可能な限り抑えること」と言える。つまり、人医療の基準を参考にすると、採血から輸血までの保存期間(最大3週間)に溶血率1%未満を達成することが、小動物臨床の輸血療法を大規模化する上でのポイントとなる。しかし、犬の輸血用血液の溶血率(3週間の時点)は、前述した目標の数値を満たせないケースも出てきてしまうため、血液の安定供給には程遠い現状がある。
そこで、ポルトガルおよびスペインの大学は、in vitroにて、ある保存液中における犬の赤血球(約200個)の溶血率を測定する研究を行った。なお、大学らによると、同液の組成はアデニン、デキストロース、マンニトール、塩化ナトリウムで、6週間(42日)の保存後に算出された溶血率は1.2%でだったとのことである。
このことから、本研究に用いられた保存液には、高い再現性を伴いつつ、「3週間で溶血率1%未満」の条件をクリアできる可能性が秘められていると思われる。よって、今後、実際に必要とされる輸血量に相当する犬の血液を用いて、同程度(1.2%)以下の溶血率が維持できるかについて、検証が進められることに期待したい。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30299571