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入院加療を契機に病状が悪化してしまう個体が抱えるリスクファクター

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床では、ペットオーナーの意向や経済事情が考慮されるため、実際に入院する症例の病状は重くなる傾向が強く、「強い痛み」または「死」に直面している場合が非常に多い。また、慣れた飼育環境(ヒト、匂い、音など)とは全く異なる動物病院の中でストレスを抱え、食欲が急激に低下してしまうケースも珍しくなく、入院中に栄養不良や体重減少に陥り、想定される予後から懸け離れた治療結果に終始することもある。つまり、「状態が悪いから入院」という判断以外にも、治療方針(自宅療養か入院か)を決定するファクターが、臨床現場の何処かに潜んでいると捉えることが妥当と言える。

そこで、スペインおよびアイルランドの大学らは、入院加療となった犬50匹のデータを解析し、栄養不良または斃死に関わる危険因子を以下の通り特定した。

◆入院中の病状悪化を予測できる因子◆
・入院症例の8割強はエネルギー要求量の25%以下の食餌しか摂らない
・3日を超える入院期間では体重が減少しやすい
・入院当初に削痩ているほど死亡率が高まる
・入院中に食欲不振を呈した個体の死亡率は高くなる

上記のような因子は、入院中の食欲不振が体重の現状維持すらも困難にして斃死リスクを引き寄せてしまうという事実を示唆していると考えられる。よって、獣医学的に入院措置がベストの選択肢であったとしても、オーナーとペットの利益を「真の意味で」検討し、入院の是非を見つめ直すことが望ましいのではないだろうか。

今後、入院中の食餌量を低下させない栄養管理法を確立する上で、ペットの入院ストレスの軽減も重要なポイントになるのかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30211177


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