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ペットショップにおける子犬の管理に警鐘を鳴らしたアメリカ疾病管理予防センター

投稿者:武井 昭紘

カンピロバクター属は、犬猫の腸に生息する一方で、下痢・腹痛などを発症する食中毒を引き起こす代表的なラセン状の細菌としても認識されており、アメリカでは年間130万人(日本では年間数千人)にも昇る患者を出すほどに猛威を奮う病原体であるという一面を持つ。故に、このような事態を収束させるためには、人医療と獣医療の連携が非常に重要であり、主な感染源の特定と防疫対策の考案が、その第一歩となるはずである。

前述のような背景の中、アメリカ疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention、CDC)は、フロリダ州保健省からの報告に端を発したペットショップにおける子犬の管理に関する警鐘をオンラインで公開した。なお、CDCによると、フロリダ州を始めとする米国18州にて事業展開をしているペットショップ6社のスタッフ29人と、同6社から販売された子犬に接触する機会のあった89人がカンピロバクター感染症を罹患したことに加えて、当該アウトブレイクから分離された株がマクロライド系およびニューキノロン系抗生剤に耐性を獲得していたという深刻な事態に陥っていたとのことである。そして、最後に、同センターは、ペット業界全体の「抗生剤の乱用」に苦言を呈して、この発表を終えている。

上記のことともに、資本主義の色が強い日本のペット業界でのペットショップと動物病院の関係性を念頭に置くと、本国にもCDC警鐘を適用すべきであると考える。つまり、ペットショップのスタッフ・経営陣は、動物医療の現状を自発的に学び、「経営」という側面とは異なる「動物福祉とOne Health」の観点を持つべきであり、それに繋がる啓蒙活動を獣医師が積極的に担うことが望ましいのではないだろうか。

ペットオーナーと子犬の健康維持を最も優先すべき「利益」と捉える社会となることを願っております。

 

参考ページ:

https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/67/wr/mm6737a3.htm


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