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小動物臨床の輸血療法への適応を期待させる感染性因子低減化技術

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床における輸血療法では、病原体の種が異なるという前提があるものの、人医療と同様に、感染症に対する充分な配慮が必要とされており、万が一、輸血用血液に病原体の混入が生じた場合を念頭に置いて、対応策を講じることが理想的である。しかし、一般的な動物病院において、いわゆる、感染性因子低減化技術を用いた処理を輸血用血液に施すことは非常に少ないため、臨床現場での感染症対策は充分とは言えず、改善の余地が残されていると言える。

そこで、以下の文献を紹介したい。

ヨーロッパに位置するドイツ赤十字社は、ヒトの肝炎ウイルス(A型:HAV、E型:HEV)および猫カリシウイルス(FCV)を濃縮血小板血漿で満たされた低減化処理用バックTHERAFLEX UV-Plateletsに混入させ、紫外線照射を行ったのち、各種ウイルスの感染価を測定した。すると、紫外線照射後のHAVの感染価は約10000分の1、FCVの感染価は約1000分の1にまで減少することが明らかとなった。

上記のことから、感染性因子低減化技術は、小動物臨床でも大変有用な感染症対策となり得ると思われる。よって、今後、THERAFLEX UV-Plateletsをモデルとして、一次診療の動物病院での輸血療法にて最も使用されるであろう全血(赤血球を含む製剤)における低減化技術の適応に焦点を当てたUV照射用血液バックの研究・開発が進むことを期待している。

血液中に存在する白血球など、有核細胞にダメージを与えないUV照射技術が開発されることを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30267410


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