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エントレブッフ・マウンテン・ドッグに発生しすい異所性尿管の原因に迫った遺伝子研究

投稿者:武井 昭紘

エントレブッフ・マウンテン・ドッグ(略称EMD、別名エントレブッフ・キャトル・ドッグ)は、スイスの峡谷の村エントレブッフにて牧羊犬・農家の番犬として生活してきた犬種で、1924年には一度、絶滅したとみなされた歴史を辿ったが、種の保存をするための活動が実って血統を残こすことが叶い、現在では救助犬(雪崩による遭難者の捜索)や愛玩犬の地位を確立している。このような背景を経験したEMDは、異所性尿管の遺伝的素因を有すると考えられているのだが、その詳細は明らかにされていないため、将来を見据えた長期的な種の保存を念頭に置くと、世界各地の獣医療が協力して解明に挑むことが望ましいと思われる。

そこで、チューリッヒ大学らは、EMDの遺伝的素因を特定するためにゲノム解析を行った。すると、4対の染色体(3、17、27、30番)に存在する6種類の遺伝子に一塩基多型(single nucleotide polymorphism、SNP)が認められたとのことである。

上記のことから、このSNPが異所性尿管の発症に関連しているとしたら、罹患犬をブリーディングに用いないことで当該疾患は避けられるのではないだろうか。また、異所性尿管は、①慢性膀胱炎を繰り返す症例の基礎疾患であったり、②問題行動(尿失禁・不適切な排尿)とオーナーが誤認識するリスクを伴うため、EMDを含めた全犬種において、①②を呈する個体も対象にして、大規模なゲノム解析が実施されることを願っている。

今回発見されたSNPによって、異所性尿管の発生学的メカニズムが解明されていくことも期待しております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/30276844/


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