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特発性てんかんを抱える犬を飼育するオーナーの動向に着目した研究

投稿者:武井 昭紘

犬の特発性てんかん(idiopathic epilepsy、IE)は、発作間隔の短縮化が病態を大きく左右する神経系疾患で、発作を止める薬剤の投与を主軸として、経過観察を継続することが通例である。しかし、既存のプロトコールや薬用量では完全に神経症状を消失させられない個体も珍しくなく、新たな治療戦略の考案が常に望まれている。

このような背景の中、イギリスの王立獣医科大学(Royal Veterinary College、RVC)は、2015年11月に、IEに対する中鎖トリグリセリド(medium-chain triglycerides、MCT)の有効性を示した研究を発表し、ピュリナ社はIE用療法食NC NeuroCare™ Canine Formulaをリリースしたことから、
今後の動向に注視したいテーマが一つ提供されていると言える。

そこで、RVCは、臨床現場の実態を探るために、犬のオーナーの協力を得てオンラインアンケートを採り、IEの治療として行っている対策を調査した。すると、回答者の70%近くが①食餌の変更を、約半数が②サプリメント(ココナッツオイルが主成分)の投与を始めたことが明らかになった。

ただし、サプリメントを使用しているオーナーの動機が、「症状の改善」および「薬剤の副作用の回避」であることも公開されている。つまり、この結果は、現時点で薬物療法が奏効していない症例を抱える獣医師に向けての警鐘と捉えることができ、治療方針・経過観察からのフェードアウトを防ぐために、オーナーと十分なコミュニケーションや相談を密に繰り返すことの必要性を暗に示唆しているのではないだろうか。

獣医師が抗てんかん薬を処方していたいも関わらず、知らないうちに、オーナーがサプリメントのみを愛犬に投与しているということが無いように、注意を払って診療業務にあたりましょう。

 

参考ページ:

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0034528818302765


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