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糖尿病を罹患した犬における心機能の変化について解析した研究

投稿者:武井 昭紘

ヒトの糖尿病は、高血圧症、アテローム性動脈硬化(冠動脈)、心筋梗塞といった重度の心血管系疾患を続発させ、死亡率を高めることが知られている。一方で、犬の糖尿病は冠動脈における病変を認めず、左室の収縮機能が軽度に減少すると報告がある程度で、ヒトと犬の糖尿病の間には、解剖学的または病理学的な相違点が明らかに存在している印象を受ける。しかし、前述した病態に加え、犬における糖尿病性心筋症の発生メカニズムの解明(ないしは完全否定)は実現しておらず、今後の課題として残されている。

そこで、タイの首都バンコクに位置するチュラロンコーン大学は、糖尿病に罹患した犬の心機能をデータ化する研究を行った。なお、同研究では、①心筋トロポニン(cTnI)、②ガレクチン-3(Gal-3)、③N末端B型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)、④心エコー図検査が実施されており、以下に示す事項が判明している。

◆糖尿病の犬における心機能の変化◆
・臨床上健康な個体に比べて罹患犬の心臓は拡張機能に障害を起こしている
・発症から1年を経過すると拡張機能障害および左室壁の肥厚が顕著となる
・①②③の変動は認められない

上記のことから、糖尿病性心筋症の発生メカニズムは、糖尿病の罹患期間を年単位の長期に渡って追跡することで、全容が明らかになるのかも知れないと推察できる。

糖尿病性心筋症のメカニズムが解明されることをキッカケにして、小動物臨床における心血管系疾患の新たな治療法が考案・開発されること願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30217497


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