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抗生剤の乱用を回避できるかも知れない炎症性腸疾患の再分類

投稿者:武井 昭紘

犬の炎症性腸疾患(慢性腸疾患、Chronic Enteropathy、CE)は、治療に対する反応から、①食物反応性、②抗生剤反応性、③ステロイド反応性に大別されるのだが、病理学的、臨床症状別、犬種別などの分類も併せると非常に複雑、且つ、曖昧な総称名と捉えることができ、CEの再分類・再定義が、これからの獣医療における課題であると言える。故に、過去の記事でお伝えした通り、その課題を克服しようとする研究が世界的に盛んで、今回も一例を紹介したい。

オーストラリアのメルボルン大学らは、ヒトのCEのマーカーであるカルプロテクチン(calprotectin、CAL)と、CEの病理学的分類の鍵を握る十二指腸マクロファージに発現するCD163に着目して、CEに罹患した犬における両者のバランス(CD163+/CAL+比)を算出する研究を行い、以下に示す結果を得たとのことである。

◆CD163+/CAL+比を用いたCEの再分類◆
・①および③は臨床症上健康な個体より低い値となる(治療後に正常化)
・②は臨床症上健康な個体と同程度の値となる

上記のことより、①③と②は、CD163+/CAL+比によって明確に区別できると考えられる。つまり、この事象を基に更なる研究を進めると、CEの原因を2つに分けることが可能となるかも知れないということであり、将来的に、②以外の病態への抗生剤乱用を防ぐことが期待できるのではないだろうか。

今後は、再分類・再定義に繋がる論文を一つに体系化していくことが重要となってくると思います。

 

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