ニュース

ペットのフィラリア予防ガイドラインを改訂させた世界を取り巻く気候変動

投稿者:武井 昭紘

今年の夏は、ダブル高気圧による猛烈な暑さが日本を襲い、災害レベルまたは「炎暑」と称される程であった一方で、30年ぶりに9月の気温が11月並みに冷え込み、10月に30度を超える真夏日が出現するといった激しい寒暖差も認めた。また、梅雨の時期から現在に至るまで発生している台風は、勢力・雨量ともに記録的で、且つ、異例の進路(コース)を辿るという予測不能な天候を齎している。つまり、領土の大半が温帯とされている本国でさえ、「去年と同じ」、「平年並み」などの経験から判断できる天候を望めなくなる未来が訪れる懸念が否めないといって過言ではない。

前述のような背景は、世界各地でも同様で、ついには、小動物臨床へも影響を及ぼし、米国糸状虫学会(American Heartworm Society、AHS)のガイドラインにも盛り込まれる事態となった。なお、AHSによると、気候変動に伴う竜巻の発生状況を考慮すると、フィラリアの分布域が拡大する恐れがあり、実際に過去4年間(2013〜2016年)に、ペットのフィラリア感染症例は20%以上も増加しているとのことである。これをもって、同学会は、フィラリアの「通年予防」を推奨する旨をガイドラインに記載するという結論に至った。

上記のことから、地球で起きる気候・天候の変化に合わせるように、ペットの予防医療プロトコールは定期的に見直し続けていく必要があると言えるのではないだろうか。よって、「天候により変遷していくこと」を前提とした予防医療の概念を少しずつ、丁寧に、動物病院(獣医師および動物看護師)からペットオーナーへ啓蒙していくことが望ましいのかも知れない。

以前紹介した獣医気象学(健康維持と天候)には、予防医療ガイドラインの改編も含まれているのではないでしょうか。

 

参考ページ:

https://heartwormsociety.org/newsroom/in-the-news/511-american-heartworm-society-releases-2018-canine-heartworm-guidelines


コメントする