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頭部に腫瘍を抱えた犬に適応された3Dプリント技術の完全再現性

投稿者:武井 昭紘

近年になって発達してきた3Dプリントは、人々の暮らしを便利にする様々なグッズや芸術性の高いアートを生み出す可能性を秘めているとともに、医療現場への応用も研究されている技術であり、現在も歩みを止めることなく進化を続けている。故に、小動物臨床における適応範囲の拡大にも注目が集まっており、フロリダ大学の研究(犬のフェイスマスク)が一例として挙げられる。

そのような背景の中、カナダのオンタリオ獣医科大学が、ある外科症例を発表した。

なお、症例は、多小葉性骨軟骨肉腫(multilobular osteochondrosarcoma)に罹患した犬で、頭蓋骨を破壊するように巨大化した腫瘍塊を頭部に抱えており、実に70%にも及ぶ頭蓋骨を腫瘍とともに切除することになった。加えて、同大学によると、失った骨組織は、3Dプリント技術にて完全再現されたチタン製のプレートに入れ換えられたとのことである。

上記のことから、病変を切除した範囲や形状に合わせて外科医が補填用の器具または組織を成形するという従来の術式は、将来的に、全て3Dプリントで代替できると考えられる。よって、仮に、成形に要する時間を縮めることが可能となれば、①診療業務の効率化(麻酔・外科手術にかかる時間の短縮化)、②特定の外科医に依存しない獣医療の実現も大いに期待できるのではないだろうか。

3Dプリント技術で、どこまでの生体組織を完全再現できるのか?
命を救うために、数多くの検証が行われることを願っております。

 

参考ページ:

https://ovc.uoguelph.ca/news/3-d-printing-research-opens-new-possibilities-cancer-surgeries


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