犬猫の呼吸器系疾患は、鼻から肺に至るまでの気道の構造、飼育環境中の空気、体型、運動量、栄養状態など、多岐に渡る要因が複雑に重なり合って発症するとともに、病原体の感染(二次感染)を伴うと病態が更に悪化することが知られている。しかし、二次感染が病態を左右するメカニズムの全容は解明されておらず、今後の研究課題と言える。
そこで、イリノイ大学は、ヒトの呼吸器系疾患に関与するForkhead box protein A2(FOXA2)に着目して、犬の呼吸器感染症(canine infectious respiratory disease、CIRD))を解析した。ところで、FOXA2とは、気道内のムチンを抑制的に調整するタンパク質で、発現が低下するとムチンが過剰に産生され、発咳の惹起、クリアランス(繊毛輸送系の働き)の減弱を生じることが知られている。
なお、同大学によると、細菌の単独感染を患った犬ではFOXA2の発現が低くなるとともに、混合感染(細菌とウイルス)では更に低下の割合が大きくなり、ムチンの過剰な産生を引き起こしてしまうとのことである。
上記のことから、CIRDにおいて、抗生剤と並ぶ、または、それ以上にムチン産生抑制が重要なキーポイントとなることが窺える。よって、将来的に抗生剤療法に代わる(抗生剤の乱用を防ぐ)治療法として、ムチン産生抑制法が見直され、様々なアプローチから有効性を再評価されていくことに期待したい。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30221439