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多中心型リンパ腫に対する化学療法を受けている犬の血液検査と転帰

投稿者:武井 昭紘

化学療法を受けている犬では、モニタリングとして血液検査が定期的に実施される。そして、異常所見が見付かった場合は、治療継続・中止や対症療法の必要性を判断するのだ。そこで、疑問が浮かぶ。血液検査から分かる情報は他にないのだろうか。例えば、予後不良の兆し、つまり生存期間が短くなる可能性を把握することはできないだろうか。

 

冒頭のような背景の中、タイのチュラロンコン大学は、多中心型リンパ腫と診断されて、且つ、化学療法を受けた犬40匹以上を対象にして、彼らの転帰と血液検査所見の関連性を調べる研究を行った。なお、同研究には、COPプロトコル(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロン)またはL-COPプロトコル(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロン、L-アスパラギナーゼ)を適応された犬が参加しており、①治療開始前と②治療から4週間経過した時点で血液検査が実施されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆多中心型リンパ腫に対する化学療法を受けている犬の血液検査と転帰◆
・①で単球増加症を認めた症例の生存期間(中央値)は有意に短かった
・①と②の両方で高窒素血症を認めた症例の生存期間は有意に短かった
・①と②の両方で低アルブミン血症を認めた症例の生存期間は有意に短かった
・②で白血球増加症を認めた症例の生存期間は有意に短かった

 

上記のことから、血液検査で特定の異常所見が得られた症例の予後は不良になる可能性が高いことが窺える。よって、今後、これらの所見を持つ症例の生存期間を延ばす治療法について議論され、リンパ腫を抱える犬とオーナーが向き合う時間が増えることを願っている。

本研究では、2.5mg/dL未満を低アルブミン血症と定義しています。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38595652/


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