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新型コロナウイルスから考える「ワンヘルス」

投稿者:AsaT

ワンヘルス(OneHealth)とは「ヒト、動物、環境(生態系)の健康は相互に関係して一つである」という考え方です。地球に共存する生命体の健康を考え、それぞれの専門の垣根を超えて協力し合う必要があるという概念です。

<人獣共通感染症にも関係>
ヒトに感染する病原体の61%が人獣共通感染症であるといわれ、WHO(世界保健機関/World Health Organization:WHO)では「過去10年間にわたってヒトが感染した新興疾病の75%は動物又は動物産品由来の病原体が原因となっている。」と報告されています。

デング熱(蚊が媒介)、エボラ出血熱(コウモリが宿主)、MARS(ヒトコブラクダが中間宿主)をはじめ、現在新型コロナウイルスがパンデミックを引き起こしています。ヒトにとって重篤な感染症の病原体を持っている可能性がある野生動物は、生育地の開発や気候変動などで、餌などを求めて私たちヒトと生活圏内に接点を持つことがあります。とくに現代はヒトのみに限らず、飼育動物やペットにも大きな脅威になっています。


<野生動物保護学会の取り組みと広がり>
このような危機的な事態に対して、1998年マレーシアで発生したニパウイルス(豚からヒトへの感染)をきっかけに野生動物保護関係者や獣医学関係の専門家が共に立ち上がり、2004年に米国で開催された野生動物保護学会が「OneWorldOneHealth」をテーマに活動を開始しました。

同学会では、感染症リスクの抑制を図る戦略的枠組みとして、12項目の「マンハッタン原則」という行動計画が提案されました。人と動物の間で起こる新興・再興感染症を防ぐには、政府機関・個人・専門家・各分野の壁を乗り越えるしか方法はないというもので、専門分野を超えて広く呼びかけられています。

国際連合食料農業機関(FAO)、国際獣疫事務局、世界保健機関(WTO)、世界銀行、国際連合児童基金等も幅広く連携を繋ぎ、日本も2013年に日本医師会と日本獣医師会がOneHealthの理念に基づいた学術協定推進の覚書を締結しました。

 

<ワンヘルスの理念>
ワンヘルスの理念はそれぞれの健康管理責任者のみならず、一般の人々、学校や企業にも採用されています。2016年には米国を拠点として、毎年11月3日は「インターナショナル『ワンヘルス』デー」が国連や米国疾病管理センター(CDC)公認のもと開催されています。毎年1月には「『ワンヘルス』アウエアエス・マンス」が設けられています。

近年では米国の高等教育においてワンヘルス学習の普及が進んでおり、ドイツのフンボルト大学(Humboldt-Universität zu Berlin)や、カルフォルニア大学(英: University of California)ではワンヘルスの専門的施設が運営されています。

 

<日本では普及が遅れている>
世界的な規模でワンヘルスの啓蒙活動が進んでいますが、日本では周知不足からまだまだ活動に遅れがあります。新型コロナウイルスは主に発症したヒトからヒトへの飛沫感染や接触感染により感染することが分かっていますが、これまでに新型コロナウイルスに感染したヒトからイヌ、ネコが感染したと考えられる事例が数例報告されています。

ペットも同じような感染症の脅威の中にいる事を意識し、医療従事者、獣医師、飼育者とが情報共有を行い、ヒト同様に健康管理に注意を払っていくことが大切ではないでしょうか。


<参考・引用元>

東京医療保健大学コラム
http://www.thcu.ac.jp/research/column/detail.html?id=98

厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
ttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/doubutsu_qa__00001.html

世界獣医師会・世界医師会「福岡宣言」
https://www.gef.or.jp/globalnet202007/globalnet202007-14

新型コロナウイルスから考える「ワンヘルス」(写真:phot0AC)


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