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保護犬との出会いを「犬材派遣会社」を立ち上げた獣医の思い

投稿者:AsaT

東京・六本木のコワーキングスペースで、犬と触れ合いながらの仕事を体験できるサービスが登場した。かつて殺処分の対象となっていた保護犬たちが、仕事中のビジネスマンに癒しを与える“仕事“をする「犬材派遣会社」の登録犬が活躍している。

記事によると、この体験サービスを提供するBuddies(東京都文京区)の代表で、獣医師でもある寺田かなえさん(31)は「日常の中で保護犬と人とが関わる場所を作ることで、お互いが“win-win”な関係性で共存できる社会を作りたい」と話す。その思いの背景には、保護動物をめぐる深刻な問題があるという。

環境省の発表では、2020年度の保健所の引き取り件数は約7万2000件で、2万4000匹ほどの犬猫が保健所で殺処分されている。殺処分は行政と保護団体による返還と譲渡といった積極的な活動によって年々減少傾向にあるが、いまだに過剰繁殖を繰り返すブリーダーや、飼い主が安易に飼育放棄するケースも後を絶たないと寺田さんは話す。

2013年の改正動物愛護管理法施行で、保健所が飼い主から動物の引き取りを拒否できるようになったことになったが、保健所に代わって動物を引き取り殺処分する「引き取り屋」という闇事業者の存在も指摘され続けている。

保護犬はこうした殺処分を逃れた犬達だが、住宅事情やライフスタイルの変化から飼育に対するハードルが高まっていて、とくに中・大型犬やシニア犬では譲渡先が生涯見つからないことも少なくない。

保健所や保護団体が一時的に受け入れ、譲渡先を探すことで保護動物たちの命を繋いでいるが、継続にはスペースや人手、そして多くの資金が必要で、自治体が活用できるリソースには限界があり、寄付やボランティアに頼らざるを得ない保護団体の運営も容易ではない。

さらに、ブリーダーやペットショップに対して導入された飼育数や管理方法などに関する規制が、今後は保護団体にも適用される見込みで、寺田さんは「行き場を失う動物たちがさらに増加することが予想される」としている。

そんな状況を変えたいとの思いで踏み切ったのが犬材派遣会社の起業。保護犬を登録犬として飼育し、心理的な安全の確保と再度人間と触れ合えるようにケアした上で、犬好きの人の元へと派遣する取り組みを行う。人々の生活に保護犬を送り込み、保護犬に対するイメージを改善しながら出会いがあれば譲渡につなげる。非営利活動でなく、敢えてビジネスの形を選んだのは「資金的に自立することで、持続可能で拡張性がある仕組みを作りたかった」との想いからだ。

六本木を選んだ理由もある。「外国人や情報感度の高いビジネスパーソンが多い都会に送り込むことで、保護犬の認知とイメージアップを行いたい」とし、東京で保護犬のイメージが向上すれば地方にも波及させることができ、保護犬という選択肢の認知が広まり、譲渡率の向上につながると寺田さんは考えている。

欧米各国ではもはや動物をペット(愛玩動物)とは言わず、対等な存在である「コンパニオンアニマル」(伴侶動物)と呼ぶ。寺田さんによると、こうした国では保護犬に対する理解も広く浸透し、飼育の対象として積極的に保護犬を選択する動きも高まっている。これに対し、日本ではいまだにペットショップ等を介して血統書付きの犬を売買する習慣が根強く、保護犬は「なつかない」「かわいそう」といった負のイメージで見られることも少なくないという。

「動物を下に見る考え方が変わらない限り保護犬をめぐる現状は変わらない」と指摘する寺田さん。「動物好きの人が動物を一方的に助けてあげる社会ではなく、人と動物が互いにwin-winな関係性で共存できる社会を実現したい」と思いを強くする。


https://www.sankeibiz.jp/article/20220326-WWA3UC4EZ5FM7ARKD2HQ6GFJHQ/3/

<2022/03/26 SankeiBiz編集部>

保護犬との出会いを「犬材派遣会社」を立ち上げた獣医の思い(写真と記事は関係ありません)

 

 


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