「彼ら」に関わる仕事に就いていると、動物と法律の間にある隔たりに一種のもどかしさを抱くことがある。なぜならば、法律上、彼らは「物」として扱われるからだ(日本の動物愛護法など一部を除く)。ヒトと同じように痛みも感じれば、喜怒哀楽の感情もみせるというのに、彼らは物なのだ。しかし、近年になって、その流れが変わってきたように思う。動物愛護の精神が世界各地の法律に追加され、ペットを家族と思うオーナーが増えてきたことからもお分かりだろうが、ヒトと同じく動物も「生き物」であるという概念が広く認知されるようになってきたのである。
そのような背景の中、イギリスの議会にある法案が提出された。なお、同法案には、動物は「sentient beings」だと明記されているという。sentient beingsとは、「意識や感覚そして人生を持った存在」の意だ。
この動きに英国小動物獣医師会(British Small Animal Veterinary Association、BSAVA)がコメントを発表した。動物は痛みを感じて様々な感情を持つ存在であり、それを法律で認めることで、彼らの福祉は向上する。そして、その法律が世界を牽引するだろうと。
動物愛護法に違反した者が逮捕されたという報道が時折なされる。それを見るにつけ、被害者(動物)の苦痛を思いやる。どれだけ痛く苦しかっただろうと。彼らは生きているのだ。まさに、sentient beingsである。イギリスで提出された法案は、日本を含めて世界各地の法律を変える原動力となるか。意識や感覚そして人生を持った存在が巻き込まれる虐待事件がこの世から無くなることを願いつつ、今後の動向に注視したい。
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