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2021年に話題になったイヌの研究

投稿者:AsaT

科学の世界では今年もたくさんの動物の研究結果が発表されました。Newsweekでは「2021年に話題になったイヌの研究」が紹介されています。

1.ヒトよりもイヌのほうが左利きの割合が多い
英BBCの「Test Your Pet」という番組では、イヌは左右どちらの前肢を使ってエサを取るかのデータを、約1万8000匹分集めました。

飼い主は、イヌの前肢が入るだけの幅がある筒を用意し、奥にエサを置きます。3回連続で左右のどちらの前肢でエサ取り出したか観察し、「ほとんどの場合で右肢(右利き)」「ほとんどの場合で左肢(左利き)」「左右どちらが優先的なのか判断し難い(両利き)」の三択でBBCに回答したデータです。

英リンカーン大の研究チームが結果を分析によると、74%のイヌが「左右どちらかの前肢を優先的に使った」、つまり「利き手」を持っていることが分かりました。このうち58.3%が右利き、41.7%が左利きでした。最新の研究ではヒトの左利きは約10.6%と発表されており、イヌもヒトと同じく右利きのほうが多いが、左利きの割合はヒトよりもずっと大きいことが分かりました。

また、オスは43.9%、メスは39.3%が左利き。男性は女性の1.23倍左利きが多いとされるヒトと同様の傾向でした。研究者たちは、ヒトとイヌとの差や性差について、ヒトは幼い頃に右利きに矯正される場合があることや、性ホルモンが利き手に影響を与えた可能性を示唆しました。

2.イヌは飼い主が他のイヌを可愛がると嫉妬する
ニュージーランド・オークランド大学の研究チームは「精巧に作られた犬のぬいぐるみ」と「円筒形の置物」を使い、飼い主が自分以外を可愛がる様子を見せた時の18匹のイヌの反応を調査を行いました。

イヌは飼い主と同じ部屋にいますが、リードに繋ぎ、飼い主に近寄ることはできません。イヌがぬいぐるみや置物に嫉妬したかどうかは、リードを引っ張ったり吠えたりする様子で評価されました。

最初に飼い主が犬のぬいぐるみを可愛がる様子をイヌに見せます。その後、イヌとぬいぐるみの間についたてを置いて、イヌからぬいぐるみが見えないようにして、同じように可愛がりました。

その結果、ぬいぐるみがイヌから見えなくても、飼い主がそのぬいぐるみを可愛がっているような素振りを見せると、リードを強く引っ張って飼い主のもとに行こうとしました。また、置物を使って同じ実験を行ったところ、イヌがリードを引っ張る力は、ぬいぐるみの場合と比べて明らかに弱くなり、研究チームはイヌは飼い主が犬のぬいぐるみを可愛がると嫉妬のサインを見せると結論づけました。

根拠は2つあり、1つ目は飼い主が円筒形の置物を可愛がっても嫉妬の様子は見られず、ぬいぐるみを可愛がった時だけ嫉妬が見られました。2つ目はぬいぐるみが見えなくなった時でも、飼い主が可愛がっている素振りを見せると嫉妬が現れ、嫉妬はぬいぐるみの存在そのものが原因ではないと考えられます。飼い主が他のイヌ(ぬいぐるみ)に愛情を示すことが、嫉妬行動のトリガーとしています。

3.品種改良されたイヌほど、飼い主のストレスに影響を受ける
スウェーデンのリンショーピング大学の研究チームは、牧羊犬58匹とその飼い主を対象に、コルチゾール濃度を1年間にわたって追跡。

コルチゾールは副腎皮質から分泌されるホルモンの一つで、ストレスを受けたときに分泌が増えることから「ストレスホルモン」とも呼ばれており、過剰なストレスを受け続けると、コルチゾールの分泌が慢性的に高くなり、うつ病、不眠症などの精神疾患、生活習慣病などのストレス関連疾患の一因となることが分かってきています。

研究チームの調査の結果、飼い主のコルチゾール濃度と牧羊犬のコルチゾール濃度の上下は同期していると分かりました。さらに飼い犬のコルチゾール濃度はイヌ自身の性格ではなく、「飼い主の性格」により大きな影響を受けることが分かりました。

牧羊犬は飼い主に協力して羊を集める「人間との関係性が強い、品種改良の進んだ犬種」です。そこで研究チームは、次にオオカミに近い古代種の24匹、飼い主との関係性は弱いが牧羊犬のような品種改良種である狩猟犬18匹を調査対象に選び、その飼い主とともにコルチゾール濃度の調査をして、牧羊犬の結果と比較しました。

その結果、狩猟犬では「飼い主の性格、飼い主との関係性が、イヌのストレスに影響を与える」という牧羊犬と同様の結果が得られましたが、飼い主とイヌのストレスホルモンの同期は見られませんでした。古代種では飼い主の性格には影響を受けず、関係性にはやや影響を受けるものの、やはりストレスホルモンの同期は見られませんでした。

一般家庭で飼っているイヌは、牧羊犬のように人間との関係性が強く、品種改良の進んだ犬種が大半です。つまり、飼い主がストレスを強く感じていると、無関係である愛犬も同期してストレスを強く感じてしまう可能性があるという事になります。

4.新型コロナウイルスとペットに関するニュース
オランダのユトレヒト大学の研究チームは2021年7月、新型コロナウイルス感染者がいる196世帯のイヌとネコ合わせて310匹から検体を採取してPCR検査とウイルス抗体検査をしたところ、67匹(約20%)が陽性を示したと発表しました。感染したペットのほとんどは無症状か、軽い症状を示すだけでした。

研究を主導したエルス・ブルンス博士は「あなたがCOVID-19にかかっているならば、他人との接触を避けるのと同様、イヌやネコとの接触も避けるべきだ」と警告しています。

2022年も様々な研究報告が行われるかと思います。VetAnimallでもニュースをお伝えしてまいります。

科学技術白書によると、2040年にはヒトとイヌが会話できるようになると予想されています。それまでは、ヒトがイヌの言いたいことを想像して、心身の健康を守ってあげなければならないでしょう。


https://www.newsweekjapan.jp/akane/2021/12/2021.php

<2021/12/21 NEWSweek>

2021年に話題になったイヌの研究(写真:photoAC)

 

 

 

 

 

 


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