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猫の「トムとジェリー症候群」の治療法~音に敏感な子で話を終わらせないために~

投稿者:武井 昭紘

犬と同様に、猫を飼っているご家庭は少なくないと思う。猫の性格は、気まぐれであったり、お手やお座りをしてくれなかったり、犬とは異なるところがある。さらに、飼っている猫の特徴として、音に敏感だという印象を持っている飼い主さんもいるかも知れない。

音に敏感な猫の中には、「トムとジェリー症候群」を呈している子がいる場合がある。トムとジェリー症候群は、携帯の着信音、料理のボウルにスプーンが落ちる音、薪割りの音など特定の音に反応して発作が起きる症状のことで、FARS(feline audiogenic reflex seizures、猫の聴原反射性発作)とも呼ばれている。FARSの対処方法としては、発作の原因となる音を発生させないようにすることが一つではあるが、日常生活において、完全に原因の音を排除することは困難である場合が多い。

そこで、ロンドン大学とDavies Veterinary Groupが薬物による発作の抑制に関する研究を行った。研究は、FARSと診断された57匹の猫に抗てんかん薬であるレベチラセタムまたはフェノバルタールを12週間投与して、飼い主さんに発作の頻度、副作用の発現を確認してもらうことで実施された。

研究の結果、レベチラセタムを投与されたグループでは、全ての猫で発作の頻度が半分以下に減少した。対して、フェノバルビタールを投与されたグループでは、発作の頻度がレベチラセタムと同様に半分以下になった例は、全体の3%に留まった。また、両薬剤とも脱力感、食欲不振といった副作用が報告されたが、レベチラセタムを投与されたグループでは、投与後2週間で副作用は改善された。しかし、フェノバルビタールを投与されたグループでは、副作用の改善は認められなかった。

このことから、レベチラセタムはフェノバルビタールよりも、安全性および治療効果が高い薬剤であることが判明した。この論文の著者であるマーク・ローリー氏は、今後、レベチラセタムは、FARSの一つの型で数分間の意識消失を伴うGTCS(generalised tonic-clonic seizures、全身性強直性間代性発作)の治療に応用できるではないかと期待している。

猫を飼っている飼い主さんが、「音に敏感なんです」と相談に来た際には、「トムとジェリー症候群」の可能性を探ってみると、猫のQOLを改善し、飼い主さんの不安を解消するキッカケになるかも知れない。

音に敏感なのは、性格の問題だけではない可能性があるので、治療を検討しましょう。

音に敏感なのは、性格の問題だけではない可能性があるので、治療を検討しましょう。

 

参考ページ:

http://www.medicalnewstoday.com/releases/304739.php

 


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