毎朝、鏡を見て身じたくをする方が多いと思いますが、これは鏡を自分だと認識できているからこその行動です。今回、大阪市立大学の幸田正典氏らの論文で、鏡に映る自分を認識した魚類が初確認されました。
記事によると、ミラーテストで小さな熱帯魚のホンソメワケベラが、魚類で初めて自分を鏡で認知できたとする研究結果を、大阪市立大学の幸田正典氏らが論文投稿サイト「BioRxiv.org」に8月21日付けで発表したそうです。
研究対象の動物の体にマークをつけて鏡の前に置き、その動物が自分の体のマークを調べたり、触ろうとするかを観察する「ミラーテスト」は、ミラーに映ったマークが別の固体ではなく、自分の体であると理解しているかどうかを判断するテストです。地球上でこのテストに合格したのは私たち人間と、知能が極めて高い類人猿やイルカ、ゾウ、カササギだけなのだそう。
幸田氏は捕獲した10匹のホンソメワケベラを鏡のある水槽に1匹ずつ入れました。最初は自分の縄張りに他のホンソメワケベラが居ると思い、激しく反応していましたが、次第に背泳ぎして鏡に近寄ったり、鏡めがけて突進して直前で止まる動きがみられるようになったそう。他の魚ではなく、おそらく自分だと気づき始めた行動のようです。
鏡に慣れてきたら、体に害のない茶色のジェルを8匹の皮下に注入。喉など鏡を見なければ気づかない部分にも注入した。魚は鏡を見て寄生虫が付いていると思ったのか、近くにある物の表面に部分をこすり付け、落とそうとするような行動が見られたそう。
鏡がありマークがある魚だけが体をこすり付ける行動を見せ、マークを付けても鏡がない魚は体をこすり付けなかった。また、鏡があっても透明なマークを注入された魚は体をこすり付けなかったそう。鏡のある水槽の魚は自分自身を認知しているようで、この結果に幸田氏はとても驚いたそうです。
しかし、ミラーテストの考案者で米ニューヨーク州立大学オールバニー校の心理学者ゴードン・ギャラップ氏は、鏡の前で見せたおかしな行動は、別の魚に寄生虫がついていると思い、取った行動かもしれないし、体をこすり付ける行動は他の魚に寄生虫が付いてる事を知らせるためだったかもしれないと、慎重な意見を述べているようです。
研究結果は私たちが思っているよりも多くの動物に「自己」の感覚があることを示しているのかもしれないし、逆にミラーテストと「自己」認知はほとんど関係がなく、単に自分の体の境界線を定義づけるために鏡を使うことを動物が学んだだけかもしれないとも指摘する。
<ナショナル ジオグラフィック 2018/09/14>